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お知らせ
2020.09.07
[在学生・受験生] 読書の愉しみpart14~本学教員が在学生や受験生にお薦めの本を紹介します~

石井美恵子『幸せをつくる、ナースの私にできること』 廣済堂出版 2013年3月
 日本中が衝撃を受けた、2011年3月11日の東日本大震災。全国から3,770人のナースたちが、寒さの厳しい東北の避難所で暮らす被災者の方々の、健康と生活を支えるために、看護活動を行いました。
 看護師や保健師は、病気やケガをしている人だけでなく、被災地の方たちが健康で幸せに生きていけるようにサポートしていく役割があります。未曾有の災害により、被災地では人の尊厳もが奪われている避難所での生活を余儀なくされている方々に対して、看護とはなにか、看護師として何ができるのかを深く考えさせられる内容です。
 具体的には東日本大震災時に、災害派遣看護師として「災害情報を集め」「避難所の状況を観察し」「どの避難所に支援が必要なのか」「その支援が何なのか」「それらを何日間活動するのか」を、実例をもとに触れており、私自身災害看護を専門とする看護師として改めて多くのことを考えさせられました。災害看護活動がどのようにされているのかを知ることができると思いますし、災害看護に興味がある方には、特にお薦めです。 
(看護学部・中山洋子)

 

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』マガジンハウス刊、2020年(1933年)
 この本の主人公は、中学2年生のコペル君(あだ名)。人間である限り、過ちは誰にだってある。僕たちは自分で自分を決定していく力をもっている。様々な経験から、ものの見方に気づかせてくれる。コペル君のあだ名の由来はおもしろい。
 人がいじめられていたり、暴力を振るわれたりした時、あなたの体は動きますか?本当の勇気とは何か!この本はまさに、自分の問題として考えることができる本である。
 人は自己中心のものの見方、考え方になるものである。貧困、いじめ、勇気、学問、今も昔も変わらないテーマに、人間としてどう向き合うべきか。現在コロナ禍において、私たちはどう自分の問題として考え向き合うのか。日常の学校生活、進路、友人関係など、どう考え行動したらよいか?を考える時のヒントになるでしょう。
 児童文学者である著者は問いかける。“君たちはどう生きるのか”と。
人は一人では生きていけない。今自分はどう生きるか。立ち止まって考える機会を与えてくれる。きっとあなたの心に響くのではないだろうか?
 この本は1933(昭和12)年7月に発行され、80年読み継がれた歴史的名著で、今年は漫画化されている。親しみやすい子どもたちに向けた哲学書であり、道徳書として、多くの示唆を得ることができるでしょう。今だからこそ、本・漫画どちらでも、親子でぜひ読んでほしい本である。
(看護学部 西山智春)

 

沢木 耕太郎『深夜特急1~6〈文字拡大増補新版〉』新潮文庫社、2020年6月~9月、旧版は1994年3月~1996年5月
 ふと旅にでたい気分になったことはありませんか?
 深夜特急 第3便(旧版)のあとがきに「もし、この本を読んで旅に出たくなった人がいたら、そう、私も友情をもってささやかな挨拶を送りたい。恐れずに。しかし、気をつけて。」とあります。筆者である沢木耕太郎が26歳のとき、仕事を投げ出して香港、マカオ、タイ、マレーシア、シンガポールを経て、デリーからロンドンまで旅をするという内容です。旅のなかで自分自身を見つめなおす、生と死を考えるといった経験をしています。
 学生時代の今、学生の皆さんには旅に出てもらいたいと思います。社会人になれば学生時代と違って時間的余裕がなくなってしまいます。今はわからないかもしれませんが、学生時代にもっと様々な経験をしていればよかったと感じるときが必ずきます。(経験談)
 しかし、コロナ禍の中、思いのままに旅行に出ることもできない今日だと思います。だからこそ、本を読むことで自分が旅をしているように、異空間での旅することもよいのではないでしょうか。旅をすることで、様々な知識や経験を得ることができます。専門職としての知識や技術を得ることも重要です。そのうえで、様々な引き出しを持っておくことは人間力に繋がると思います。
 今はかなわないかもしれませんが、『よい旅を。』
(社会福祉学部・松永尚樹)

 

金澤泰子『ダウン症の書家 金澤翔子の一人暮らし』かまくら春秋社、2019年4月
 ダウン症の書家、金澤翔子さんを知っていますか?テレビなどで見たことがある人もいると思います。私は、書のことは詳しくわかりませんが、彼女の書いた書は、彼女の気持ちが込められていて、心に残る書だなと感じています。この本は、彼女が一人暮らしを始めてからの様子を、お母様が書いた本になります。
 本の中での一番好きなエピソードに、「どんなに遠くからでも月が一緒に付いてきて、見守ってくれていると思っている。」との記述があります。日々の生活に追われていると、空を見上げることも忘れてしまいます。しかし、外出から帰り、空に月が見えると「お月様ありがとう」と丁寧におじぎをして家に入る彼女は、なんて素敵な世界にいるのだろうと感動しました。
 障がいを抱えながらも、周囲の人たちの助けを借り、自分の力で生活をしていく姿にとても勇気をもらえる本です。障がいはその人の持っている個性と言う人もいますが、この本を読むと、本当にそのように感じます。
 みなさんも、性格や考え方、今までの生活背景など、同じ人は一人としておらず、みんな一人ひとり違います。医療や福祉、教育など、人と関わる職種は、患者さんや利用者さんなど、一括りで見るのではなく、その人その人、一人ひとり見ることが大切になります。一人ひとり、その人を見ることの大切さを考えるきっかけとなる本ですので、ぜひ手に取って読んでみてください。
(看護学部 橋本明日香)


湯本 香樹実『夏の庭-The Friends-』福武書店、1992年5月
 3人の少年と孤独な老人のかけがえのないひと夏を描いた傑作で、映画化されたり、翻訳されて海外で紹介されたりもしました。
 「人が死ぬってどういうこと?」と少年たちが好奇心を持ったところから物語が始まります。その好奇心を満たすために、少年たちは、近所の一人暮らしの今にも死にそうなおじいさんの生活を「観察」し始めます。次第に、少年たちはおじいさんと親しくなり、おじいさんの「秘密」にも触れ、世代を超えた心の交流、友情に発展していきます。
 少年たちは子どもなりに家庭内に問題を抱えており、彼らの心を暗くしていました。しかし、おじいさんとのかかわりで、彼らはそれぞれの抱える悩みを乗り越えていきます。また、「見張られていた」おじいさんも、少年たちとの出会いにより、生きる力を取り戻していきます。
 そんなおじいさんとの別れ(死)は、突然訪れます。少年たちとおじいさんが共有した「時間」の描き方が印象的で、おじいさんの生と死を目の当たりにして「大人」になっていく少年たちのセリフに彼らの成長を感じます。そのセリフの中には、書き留めておきたいようなものがいくつもあります。いつか人は「死」によって「無」になるけれど、誰かとつながり、その誰かの心に何かを残すことができたのなら、「無」にはならないと感じさせてくれる物語です。
 子どもと高齢者の親和性や生と死を描いた作品はたくさんありますが、その中でも一度読んで、また数年後に読み返してみたいと思えるような作品です。
(社会福祉学部 安留孝子)

 

大西若稲『さい果ての原野に生きて 開拓保健婦の記録』
日本看護協会出版会、1985年7月
 保健婦(現在は保健師)は昔から人々の健康を守り生活状況を改善し、地域全体の人々の生活の質を向上させる活動をおこなってきました。その始まりは欧米の訪問看護からとされていて、昭和12年ごろから法律に定められた免許資格を有する職種としての活動がおこなわれるようになりました。その活動場所の多くは公的な場所で、保健所や市町村でした。
 この本は特に昭和20年の第2次世界大戦後の特徴的な保健婦活動である「開拓保健婦制度」について、著者の大西若稲が実際の活動を持前の独創的な行動力で農民を組織し、保健婦を組織し、行政を動かした個性あふれる勇気と行動を記した自伝です。敗戦後には国の法案に後押しされて、罹災者、復員者、引揚者などが新天地を目指し北海道、東北をはじめとする道や県に開拓農民として入植されました。彼ら開拓農民とともに暮らし人々と密着した場で、過酷な労働と環境の中で見出された人々の保健・医療のニーズに応える活動を、開拓保健婦は行ってこられました。
 本書を読み進めると、著者が行った様々な保健活動はもちろん、開拓農民の筆舌に尽くしがたい労苦が伝わってきます。このような方々に寄り添う保健活動とは、また本当に相手のことを考え親身になる気持ちを持っていなければ行えないのではないか、と頭が下がる気持ちになります。また、著者が開拓保健師になるまでの経緯を見ると、初めから看護職を目指していたというわけではなく、生い立ちや様々な経験から人の役に立ちたいという思いから保健婦になったということがわかり、人生においての経験は、つながり活きるということも感じられ勇気づけられます。
 時代の変遷とともに人々の生活や病気なども変化していますが、保健師の活動の原点は何も変わらないということを改めて考えます。
(看護学部・橋本いずみ)

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