EN

授業情報 LESSON

授業情報
2021.10.08
読書の愉しみpart13~本学教員がみなさんにお薦めの本を紹介します~

NHKラジオセンター「夏休み子ども科学電話相談」制作班
『大人もおどろく「夏休み子ども科学電話相談」 鋭い質問、かわいい疑問、難問奇問に各界の個性あふれる専門家が回答! 』
(サイエンス・アイ新書)SBクリエイティブ、2017年7月.
 「夏が過ぎ 風あざみ~♪」『少年時代 (井上陽水)』夏からコスモスの花が秋風に揺れる季節となりました。
 夏で思い出すのが、全国こども電話相談室(2019年より子ども科学電話相談)である。私が幼少時代から続いている番組が書籍としてまとめられている。『なぜ夜になると星が出るのですか』『空は、どの高さから空なのですか』など、子どもたちの素朴な疑問があふれている。大人ですら、「へ~、そうなんだ!」と思えることがまとめられている。子どもの「なぜ」は素直である。知ったつもりというのは、本質はわかっていないことが多いのではないか。
 Why?は新たな発見となる。「なぜ」を突き詰めることが勉強であり、研究である。世の中や事象に疑問を持ち、調べることで、自分自身に知識を得ることができる。だからこそ、「なぜ」を突き求めてもらいたい。最近では、インターネットでなんでも調べることができる。しかし、わかったつもりになっていないだろうか。インターネットに頼らず、本を読むことは知識として幹が成長する。知識が大きな樹となるように「なぜ」を追求してもらいたい。
 最近、児童向けの実用書が人気である。大人ですら読みたくなる内容であり、わかりやすく解説されている。子ども向けの本もあなどれないものである。読書は知識を得るにはもってこいである。
 これから、読書の秋である。自分にあった、本に出会えることを祈っている。

学校では教えてくれない大切なことシリーズ(旺文社)
https://www.obunsha.co.jp/pr/gakkou/

(社会福祉学部 松永 尚樹)

 

 

シッダールダ・ムカジ―『がん ―4000年の歴史- 』ハヤカワNF文庫、2016年6月
 30年以上にわたり日本人の死因1位の座を占める病気「がん」。この本は、4000年前から続くがんと人類の闘いの記録である。著者のシッダールダ・ムカジーは現役の腫瘍内科医でありながら、優れたノンフィクション作家でもあり、まるで作られたストーリーのように話は語られていく。
 中国の歴代皇帝が追い求めた不死の力をがんは生まれながらに持っている。むしろ、細胞が不死の能力を得たからがんになれたとも言える。まさに、原題の「The Emperor of All Maladies(すべての病気の皇帝)」の名のとおり、がんは人類にとって最強の病気そのものである。
 がんはなぜ手強いのか?それは、がんの起源が患者自身の細胞にあるからである。本書ではがんのことを「われわれ自身のゆがんだバージョン」と例えている。つまり、がんはその悪辣な性質と裏腹に正常な細胞と共通する部分を多く持つ。そのため、がんのみを特異的に攻撃することが難しく、抗生物質で身体に侵入した細菌のみを殺すようにはいかないのである。
 がんのみを攻撃するような薬はないのかと、新たな武器を探し求めたのが、アメリカのダナ・ファーバー癌研究所に名前が残るシドニー・ファーバーである。彼は、自身の手痛い失敗から葉酸拮抗薬を用いたがん化学療法を思いつく。この治療法は、白血病患者につかの間の寛解をもたらしたに留まったが、ファーバーにとって大きな可能性を秘めた出来事であった。つまり、がんは薬で治療できるかもしれない。
 ファーバーの葉酸拮抗薬による治療から70年以上たち、人類はよりがんに特異的に効く分子標的薬や、全く別の視点からの治療薬である免疫チェックポイント阻害薬を手に入れた。しかしながら、がんを克服するまでには至っておらず、新しい治療法の開発が続けられている。昨年には、ホウ素中性子捕捉療法用の薬品が薬事承認された。人類とがんとの闘いは今後も続いてゆく。

(社会福祉学部・山﨑 博幸)

 

 

アレックス・ロビラ フェルナンド・トリアス・デ・べス著、田内志文訳
『Good Luck』ポプラ社2004年年6月
 運とは、辞書で調べると「人の身の上にめぐりくる幸・不幸を支配する、人間の意志を超越したはたらき。天命。運命。」と書かれている。良いことが起これば「運がいい」と喜び、辛いことや失敗が続くと「運が悪い」とがっかりし落ち込む。この本は仕事も、財産も全て失い変わり果てた友人と54年ぶりに再会した時に、幼少時祖父から聞かされた「魅惑の森」の物語を話して聞かせる内容である。その物語に、幸運をつかみ取るためのキーワードが盛り込まれている。
 運とは、呼び込むことも引きとめることもできない。幸運は、自らの手で作り出せば、永遠に尽きることはないものだという。幸運が訪れない事には理由があり、幸運を手に入れるために自ら下ごしらえが必要なのだ。そして、下ごしらえを先延ばしにすると幸運は訪れない。そのために今日できることは今日する。また、欲するばかりでは幸運は手に入らず、幸運を呼び込む鍵の一つに人に手を差し伸べられる心の広さが必要だという。さらに、自分の知っていることがすべてとは限らないため、あらゆる可能性に目を向けなくてはならない
 この話は幸運をつかみとるための本であるが、私たち看護職者が日々実践していることに共通している。患者様・利用者様の声を聴き、観察し、すべての年代の様々なキャラクターに広い心で対応する。その対応ができるように常に準備もしている。そう考えると医療福祉にかかわる従事者は、すでに幸運を手に入れているのかもしてない。
 職業人として幸運をつかんだ私は、プライベートに更なる幸運が訪れるように下ごしらえをしていきたい。

(看護学部 木戸 美佐子)

 

 

木藤亜也『1リットルの涙 難病と闘い続ける少女亜也の日記』
2005年2月、幻冬舎文庫
 この本は、難病を患いながらも人生を全うした中学生の少女のノンフィクション作品です。2004年に映画化、2005年にテレビドラマ化、さらには2018年にはトルコでもドラマ制作がされている作品です。
 「病気」とは、突然かつ理不尽に襲ってきます。この本の著者は、中学時代に突如、何もないところで転んでしまう等の体の不調を訴え病院へ行くと「脊髄小脳変性症」という難病と診断されます。この病気は、神経細胞が徐々に失われていってしまいます。普段、私たちが何気なく行っている呼吸したり友達と話したり、歩いたりといったことが徐々にできなくなり、最後には運動機能を失ってしまう病気です。一方で、知能障害はまったくないという特徴をもった病気でもあります。つまり、意識ははっきりしているのに今までできていたことができなくなります。闘病生活を続ける著者の苦しみ、そして最後まで難病に立ち向かう姿が描かれています。さらには、家族の揺れ動き葛藤する心のメッセージも1つ1つの文章にこめられており、今現在の日常が当たり前ではないと語りかけてくれるように感じます。
 医療従事者は、様々な疾患と戦う人たちと向き合う必要があります。臨床工学技士も血液透析療法、人工呼吸器など多くの業務でコミュニケーションが大切になります。私自身も病院で勤務しているとき、苦しみながらも病気と向き合う人たちの姿をみて、悩み苦しんだ経験があります。これから医療の仕事を目指す学生の皆様には、この本を読んで「人の心に寄り添える医療従事者」を目標にして頂きたいと思います。

(医療技術学部 曽我部 将太)

 

 

毛内 拡『脳を司る「脳」』講談社Blue Backs、2020年12月
 本書は、以前から知られていた神経細胞(ニューロン)が行っている脳の働き以外に、感情や知性などのニューロンの働きだけでは説明できない現象にスポットを当てています。特に、脳の隙間である「間質」とニューロンを取り巻く「グリア細胞」の働きに関する新たな知見を紹介しています。
 第一章では、脳の基本的な知識を紹介しています。脳がほかの体内循環と隔絶していること、ニューロンは発生する電気的な活動(電気信号)によって情報伝達を行っていること、その電気信号はシナプスを介して神経伝達物質に置き換わり伝えられること、シナプス伝達の効率の変化が記憶や学習の基盤となっていることなどが、図表を使って分かりやすく解説されています。
 第2章では、脳研究の3本の柱、「脳障害の記述」、「電気生理学」、および「顕微鏡的技術」に関して解説されており、特に顕微鏡的技術の発展によりニューロン以外の要素の意義も明らかになってきたことが示されています。
 第3章では、脳の細胞と細胞の間の「間質」が大変重要であり、そのスペースは睡眠や覚醒などの脳の状態により増減することや、間質液で満たされていて、脳内物質の通り道となっていて、中でも神経修飾物質がこのスペースを拡散して伝わり、心の働きに関与しているという興味深い内容が記されています。
 第4章では、脳を浸している脳脊髄液の重要性が示されています。脳脊髄液は脳の中の間質液と交換することでリンパ排泄のような働きをしており、睡眠中に脳を洗浄しているそうです。この脳脊髄液の流れが異常になると有害な物質が溜まりアルツハイマー病などの病気を引き起こすことも注目されています。
 第5章では、エファプティック(非シナプス的)・コミュニケーションという新しい情報伝達法が実験的に証明されたことが記されています。細胞同士がシナプスを介さずに細胞外電場を利用してワイヤレス伝送を行っているそうです。まるでBluetoothのようです。この細胞外電場がニューロンに与える影響は無視できないそうです。また、脳は細胞外スペースの体積を調節することで、より効率的にエファプティック・コミュニケーションの機能を働かせているようです。
 第6章では、アストロサイト(グリア細胞のひとつ)の新たに発見された脳機能における役割が記されています。ヒトなどの進化した複雑な脳ほどニューロンに対するアストロサイトに比率が高い傾向にあり、シナプスの伝達効率を変化させることで脳の情報処理に関与しているかもしれないそうです。さらに、心理機能や精神機能、記憶の定着などにも関与しているそうです。
 「おわりに」には著者が「脳科学」に興味を持った端緒が記されています。高校生の時にボラティア活動で特別支援学校の運動会に参加し、重度知的障害と診断された同年代の生徒さんに付き合った1日の体験だそうです。著者自身と障害を持つ生徒さんは全く変わらず、その差は紙一重であると感じ、「人間ってなんだろう、ヒトを人間たらしめるのはどういうことだろう」を言う疑問を持ち、「脳」への興味へとつながったそうです。みなさんも本学のボランティア活動を通じて、大きな人生の目標が見つかるとよいと思います。そのためにも本著を読んでみてください。

(医療技術学部・村上 博和)

公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会