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皆様へのお知らせ NOTICE

お知らせ
2020.06.15
[在学生・受験生] 読書の愉しみ part2~本学教員が在学生や受験生にお薦めの本を紹介します~

石隈利紀
『寅さんとハマちゃんに学ぶ助け方・助けられ方の心理学』誠信書房、2006年11月
 観光バスは、長距離の移動を伴う事が多いためカラオケ機器やテレビ・DVDプレイヤーが備え付けられている車両が多くあると思います。そのDVDのソフトは様々なジャンルの映画を用意してあると思いますが中でも山田洋次監督の作品である「男はつらいよ」シリーズや「釣りバカ日誌」シリーズの2作品は必ずと言って良いほど備え付けられているのではないでしょうか。
 この2作品はシリーズものとして、作品数が多いこと、世代を問わず楽しめるという理由もあって選ばれているという理由が考えられますが、それ以上にそれぞれの作品の主人公である「寅さん」や「ハマちゃん」のきらめく個性やその生き方や、人との関係の築き方が多くの人の心をつかんで離さないという魅力があるためではないでしょうか。
 今回紹介するこの本には寅さんとハマちゃんが人と関係を築くための方法の違いを指摘しています。「寅さんは出会う相手の一人ひとりの世界にスーッと風のように入り、相手の世界に入り込む」という「百人に対して百の顔をもつ」という援助方法が特長です。
 一方ハマちゃんは釣りが好きで家族を大切にしていて、自分の確固たるライフスタイルを持っており、百人いても1つの顔で接するという特長があると指摘しています。
 私自身の福祉の分野を志したとき、「人のために役にたてる、人に必要とされる」という仕事に大きな魅力を感じていました。対人援助サービスの仕事に従事して、「ありがとう」「助かった」と言われる度に多くの喜びを感じていましたが、5年ほどすると利用者さまの「ありがとう」という言葉に実は私自身が助けられている事に気づきました。
 本著の中では人間関係においてどちらかは「助けられる人」、どちらかは「助けられる人」という固定した形があるわけではなく、「困ったときは援助をもらう」こと、「個性を活かして助け合う」こと、「ネットワークで支え合う」こと、「少しだけ「助け上手」「助けられ上手」になることについても触れられています。
 対人援助サービスに興味・関心のある人はもちろん、そうでない人にとっても豊かな人間関係を築き人生を豊かにするためのたくさんのヒントがたくさんあると思うので、是非読んでみて欲しいと思います。また、本著を読んだ後のDVDもおすすめです。
(短期大学部 清水久二雄)

 

渋谷昌三『見てわかる心理学』ナツメ社、2007年4月
 恋に力を発揮する色は、何色でしょうか?色にこめられた意味とは?色彩は無意識に働きかけて人の心理に影響を与えます。今日、あなたは大切な人とお会いします。何色の洋服を選びますか?女性をやさしい気持ちにさせるピンクは、恋の成就や結婚を願う女性に最適の色。しかし、結婚を望むときは?
 人の行動は、意識しているにせよ無意識にせよ、心の働きのあらわれなのです。性格分析や恋愛の心理などについてだけでなく、社会的な影響の大きい出来事や事件が起きた時にも、必ず心理的なことが話題になります。「なぜ、そのような行動をしたのか?」、行動の背後には、その人の心の働きがあるのです。
 科学としての「心理学」が誕生したのは、19世紀の後半になってからのことです。人の「心」とは、いったいどのようなものだろうか、を考えていく学問といえます。また、一方で自らが生きる意味を考えていく学問ともいえます。
 私たちは、人との関係性の中で生きています。社会の中で生きていくためには、人とのコミュニケーションが大きな役割を果たしています。ときには人間関係がうまくいかないことがあります。そんなとき、その原因を他者の性格や自分の性格のせいだ、と考えがちですが、違った視点で考えていくことも大切です。たとえば、人と人との関係性と社会全体に目をむけることです。
 本書は、心理学の基本的な知識について、図解を用いながら、テーマごとにまとめてありますので楽しみながら読み進めることができます。心理学の入り口に立つみなさんにとって、複雑な人間の心理を「なるほど!」と思わせるような興味をそそる一冊です。
 心理学の知識は、きっとあなたの人との関係性を良好にするためのヒントを与えてくれるでしょう。心理学は、自らの人生をより豊かにしてくれる学問といえます。
(社会福祉学部 植原美智子)

 

NHKスペシャル取材班
『健康格差-あなたの寿命は社会が決める-』講談社現代新書、2017年11月
 「健康格差」は、健康に対する自己管理能力の低さが原因ではなく、生まれ育った家庭環境や地域、就いた職業や所得などが原因で生じた病気のリスクや寿命など、私たち個人の健康状態に気づかぬうちに格差が生まれてしまうことを指す。ともすると、「自らの健康管理に怠ったゆえの自業自得」と捉えられることが少なくない。「健康格差」問題は、所得の格差、非正規雇用の増加、子どもの貧困などと重なり「命の格差」に直結する。いまや「自己責任論」では済まされない。いずれ、税金や保険料といった形で自分に跳ね返ってくる。
 イギリス国民はパンを主食としており、そのパンのメーカーが国に協力し、こっそり塩分量を8年かけて20%減らすことで、国民一人当たりの塩分摂取量を1g以上減らすことに成功している。日本では、愛知県武豊町が地域住民の「人と人とのつながり」の場としての「高齢者自身が運営する憩いのサロン」活動を通して、「健康格差」の解消に成功している。
 これらは一例であるが、いまや社会全体のシステムを変えていく仕組みづくりが必要である。次の世代を担う学生の皆さんには、これからの社会活動、大学での学びを活かし、すべての人の健康に目を向ける一助になっていただきたい。そのきっかけづくりとして本書をお勧めします。
(看護学部 奥野みどり)

 

渋沢栄一 著 守屋淳 編『現代語訳 論語と算盤』筑摩書房(ちくま新書)、2010年2月
 新1万円札の顔、そして2021年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」では主人公に決定し、
一大ブームとなっている渋沢栄一のロングセラー「論語と算盤」の現代語版です。とても読みやすく現代語訳されており、若者にも理解しやすくなっています。
 コロナ禍において、何を頼りにどう進むべきか、社会全体が迷走している中で、「どう働き」「どう生きる」べきかの指針を示してくれています。「論語」とは道徳、「算盤」とは利益を追求する経済活動のことを指しており、『論語と算盤』は渋沢の「利潤と道徳を調和させる」という経営哲学のエッセンスが詰まった一冊です。
 「道徳」に基づいた「経営」という発想には、保健・医療・福祉・教育を志す皆さんにも学ぶべきことが多いはずです。
 この『論語と算盤』はマスコミ各誌でも多く取り上げられており、その話術を使ってのわかりやすい授業が評判の、オリラジ中田敦彦さんが、自身のYouTubeチャンネル「中田敦彦のYouTube大学」で「中田敦彦史上No.1書籍!」と紹介されていました。
 それでも「難しそうだなあ」と思われた方は、この『論語と算盤』は実は漫画化もされていますので、サラッと読んで概要を理解したいという方にはこちらもお薦めです。
渋沢栄一原作 守屋淳 編『まんが 超訳「論語と算盤」』光文社、2020年1月
 「日本資本主義の父」と呼ばれ、日本経済の近代化に貢献した渋沢の考えは「論語」を柱とした日本伝統の考えであり、その上での経済近代化を進めました。経済人のイメージが強い渋沢ですが、経済発展による貧富の格差を心配し、社会事業にも情熱を注いだ「福祉の先駆者」でもあります。それがわかる書籍も紹介しておきます。
杉山博昭 『渋沢栄一に学ぶ福祉の未来』 青月社 2019年12月
(リハビリテーション学部・大竹勤)

 

堀江貴文『マンガ版「好き」を仕事にして生きる』宝島社、2019年4月
 現代社会では、AI(人工知能)の進化がめざましい。おそうじロボット、介護ロボット、接客ロボットなど、果ては、ロボット手術なども登場している。私は、「将来、世の中が全て、効率的、正確なAIによって運営されることになったとしたら、人間がロボットに支配される世の中がくるのではないか?人間の生きる価値はどこにあるか?」などの一抹の不安を覚えた。著者は、この点について「床を綺麗にするおそうじロボットはあるが、床に散らかした本を本棚に戻したり、脱ぎ散らかした服を洗濯機に入れたりといった「手作業」をしてくれるロボットはいない。」といっている。医療福祉職に置き換えると、マニュアル的な仕事は、AIは完璧にこなすであろうが、人の心に寄り添い、人を気遣い、臨機応変に対応することは出来ないのではないか?これこそが、人間の最大の武器ではないか?
 更に著者は、「生活の為に働いています。」「家族を養う為に働いています。」そう答える人は、AIから仕事を奪われるであろう。
「楽しいから」「好きだから」と答える人であれば、AIの出現を恐れることはない。」とし、AIを味方につけ、好きな仕事に没頭することで世の中をも変えられるといっている。
 今、大きな社会問題となっているコロナ感染症により、医療崩壊、経済危機などを、危ぶむ声も多々でているが、「楽しいから、好きだから」と仕事に取り組んでいる人々が、ただ嘆くばかりではなく、新しいアイデアを出し、行動をしている姿をみると、この本はとても真実味がある。
 近い未来に社会の力になり得る高校生の皆さんには、好きを仕事にして、明るい世の中を導いて欲しいと切に願う次第であります。
(短期大学部 清水春代)

 

森 浩一『倭人伝を読みなおす』ちくま新書、2010年8月
 日本考古学の泰斗、森浩一先生が晩年に著した一書です。
 日本の歴史を学ぶ折に必ず触れることになる史料「魏志東夷伝倭人条」、いわゆる「魏志倭人伝」を森先生と共に読み解いていくというものです。
 先生いわく「邪馬台国がどこにあったとか卑弥呼とはどんな女王だったかだけに関心をもつ人は、本書を読まないほうがよかろう。というより、読んでほしくないのである。倭人伝が何を描こうとしているかを、圧縮された文章の端々から読み解く楽しさを共にしてもらえる人たちのために書いたのである。」とのことです。
 次々と展開していきます。関連した古代史のテーマや時代背景などにも触れられており、参考となる研究書の紹介も所々にちりばめられていて、より理解を深めることができます。また、1つのテーマを4頁ほどでまとめているため気軽に読み進めることができます。多忙な毎日の中のわずかな休息時間にお薦めの一冊です。
(社会福祉学部 梅山文秀)

 

サン=テグジュペリ『星の王子さま』、岩波文庫、2017年7月、
 「あんたは、おれにとって、この世でたったひとりのひとになるし、おれは、あんたにとって、かけがえのないものになるんだよ」
 星の王子さまの本の中には実に示唆に富む素敵な文章が多くあります。最初の一文は、旅先の星で出会ったキツネが「仲良くなる」ということを王子さまに伝える場面で出てくる言葉です。この言葉を聞き、旅に出た星の王子さまが自分の星に残してきたバラに思いを馳せます。王子さまは自分の星のたった1つの生物であるバラを手塩にかけて育てていました。
 誰かと関わりその関係を大切に育むということは、親と子ども、患者と支援者、学生と教員の関係にも通ずるところです。子どもにとって母・父親は各々唯一の人であり、親にとって子ども達は各々かけがえのない存在です。
 看護師として私は患者に対してかけがえのない存在であると伝えられるよう言語的・非言語的に働きかけ、患者にとって自分が唯一の人間と思われる存在であるということを意識し患者の想いをおざなりにしないように心がけてきました。私にとっての精神看護における関わりとは人に寄り添い、その存在そのものが影響し合い、人を成長や回復に導く宝物を心に残していくことなのです。それは教員として学生と向き合う時も同じです。
 日々何気なく行われていることが、言葉と出会いその行動の意味を意識して働きかけられるようになると希望や信念をもって動けるようになります。専門職として自身を磨き続けていく時、役立つのは専門書だけではありません。本の世界の中には素敵な言葉や心揺さぶる文章がたくさんあるのです。
(看護学部 片岡信子)

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