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授業情報 LESSON

授業情報
2021.06.02
令和3年度「読書の愉しみ」part1~本学教員がみなさんにお薦めの本を紹介します~

 昨年度、好評の裡に連載を終了した「読書の愉しみ」を今年度も再開致します。遠方への外出・旅行もままならないこのような時だからこそ、何事に対しても主体的に取り組むことが大事なのではないでしょうか。  

 「読書」という行為は、非常に主体的な行為です。意志を持って読もうとしなければ内容が入ってきません。この点が、動画との大きな違いです。また、内容が入ってきても、頭の中で「考える」という行為が無ければ理解できません。「考える」という行為があってこそ、理解した内容の定着がはかれます。つまり、意志を持って読むという行為自体が、すでに主体的な取り組みに繋がるのです。  

 「読書」という行為を通してあなたの知性と品性を磨き、そして、主体的に何事にも取り組めるようになられることを我々は願っております。そのために、みなさんの世代で是非読んでいただきたい本をここに紹介いたします。

 

山本七平『「空気」の研究』文藝春秋、1977年4月  

 この本でいう「空気」は、自然界の空気を意味しない。それは「空気を読む」、「君はKYだね」「空気を読みなさい」という時の空気である。ただし、著者はわたしたちに空気に適応したり、空気に従うことを推奨してはいない。むしろ、本書では日本に特有な空気の支配や拘束からの脱却を求めている。とはいえ、ともに日本人に「空気」を把握することの大切さを示している点は一緒である。  

 「空気」をテーマに掲げた本書は、40数年前に出版された。日本人や日本社会の特質を見事に捉えた名著として、今も多くの人々に読み継がれ、引用や紹介が頻繁に行われている。本書は、「日本人は物事を空気で決める」という。この空気という存在が、わたしたち日本人の思考や判断、決定や行動を拘束している事実、及び空気の支配からの脱却の方途を、説得力のある論理と事実をもとに見事に描き出している。

 山本によると、どのような社会にも空気は存在するが、空気による支配や決定を許すのか、それを防ぐ方法を講じて許さないかの違いである。そして日本は空気の支配を許し、空気がわれわれを拘束し続けている社会だという。醸成された空気が、日本では抗いがたい力を発揮し、不都合なデータや現実は無視もしくは軽視される。これら山本の言説には、経験的にも理解できたり、納得できる事柄が多い。  

 わたしも本書から、大きな示唆と刺激を受けている。この空気の存在や機能という視点からみると、ときに日常生活での出来事をはじめ、社会福祉の政策や実践における諸決定も、かなり違った姿に映ってみえる。わたしたちが「空気」をどう捉え、どう向かい合うかを考える上でも有益な本である。

(社会福祉学部 稲葉 一洋)

 

ポール・ナース著 竹内薫訳「WHAT IS LIFE 生命とは何か」 ダイアモンド社 2021年3月

 私たちは生きています。しかし、生きているっていったいどういうことなのだろう?生命って、なんだろう?そんな問い、疑問をもったことはありませんか?  

 この問いに、ノーベル生理学・医学賞受賞、細胞生理学者である著者が答えてくれます。人類が悲惨な状態に陥らないために、生涯で一冊の一般向けに書かれた科学書です。「科学は苦手だ」と感じている人でも、科学的な発見のわくわくする高揚感、自然界の理解が深まっていくことで得られる満足感を経験できる本です。本書は5つのステップ(5つの考え方)で、生命の本質がわかるように教えてくれます。  

 1.細胞 2.遺伝子 3.自然淘汰による進化 4.化学としての生命 5.情報としての生命。  

 COVID-19(新型コロナウィルス感染症)のパンデミックが世界中を混乱に陥れ、私たちの日常は大きく変わりました。新型コロナ感染症だけでなく、人々の生き方、食糧問題、パンデミックから身を守る方法・治療等々、選択しなくてはなりません。この惑星上の生き物が、どのようにつながっているのかを理解でき、「生の物語」として、この本には科学という営みの本質が隠されています。  

 私たちは生命を慈しみ、生命の世話をしなければなりません。生命を理解する必要があります。  

 今だからこそ、読みたい、読んでほしい。医療・保健・福祉に係る専門職を目指す高校生のみなさんに、是非おすすめしたい一冊です。

(看護学部 西山 智春)

 

山﨑 明夫『にほんごがこんなふうにみえたのよ!~39歳で脳出血! オレの片マヒ&失語な日常~』、株式会社QOLサービス、2016年7月
 高次脳機能障害とはなにか?知っている人は少ないと思います。人間の脳は非常に高度で複雑な働きをしています。集中すること、言葉を理解して字を書き、読むこと、計算すること、約束を覚えておくこと、相手の表情を読み取ること、周囲の状況を踏まえて時には遠慮することなど、これらはすべて人間の脳の働きによるものです。
 この様な人間の高度な認知機能が障害されるとを、高次脳機能障害といい、普段の社会生活を送ることが非常に大変になります。この障害は交通事故やスポーツ、高所転落などによる脳外傷や脳卒中などにより、ある日突然に誰もが当事者になる可能性があります。高次脳機能障害に関する情報は、医学や神経心理学領域の書籍にまとめられていますが、最初からそれらを読んでも「面白い!」と感じる人は少ないでしょう。そこで、こちらの書籍をお勧めします。
 この書籍は39歳という若さで脳出血による片麻痺や失語症になった山﨑さんが、自身の経験をとても分かりやすくリアルに表現してくださっています。内容は四コマ漫画を中心に、日々生じる困りごとをとても分かりやすく書いてあります。また、7年間のリハビリを通して感じたことなどが、とても前向きに書いてあります。
 人間の認知機能がいかに高度な機能から成り立っているか。その機能が、突如として障害されたらどのような困難さを生じるのか。そして、そのような困難さに対して、どの様に立ち向かうのか。当事者である山﨑さんの姿から学ぶことができます。リハビリテーションに興味をもっていただくきっかけにもなると思います。このコロナ禍で時間があるときに、是非とも手に取ってみて下さい。

(リハビリテーション学部 山口智晴)

 

クリスティ-ン・ボ-デン著 檜垣陽子訳 「私は誰になっていくの ? アルツハイマー病者からみた世界」(株)クリエイツかもがわ 2003年10月
 クリスティ-ン・ボ-デン氏は、1994年に夫と離婚し、3人の娘を育てていましたが、しだいに、激しい頭痛に毎日悩まされるようになり、1995年に病院で検査を受け、アルツハイマー病と診断され、1996年にオ-ストラリア政府の官僚を退職することになりました。
その後、友人たちから、「認知症の人の気持ちや経験を書くべきだ」と背中を押され、「私は誰になっていくの ? アルツハイマー病者からみた世界」を書くこととなった。
 この本書では、診断後、仕事を辞めて、苦しみや葛藤、家族や友人との「こころ」の触れ合いが書かれています。
 皆さんは、「認知症」と聞くと、「何も理解できなくなる」や「本人はわからないので苦しまない」、「介護する家族は大変」などというイメージを持ってる人が多いのではないでしょうか。しかし、認知症になると「記憶力」や「計算力」などが低下する場合があっても、豊かな感性は残っているために、本人が一番苦しんでいることに気づかされる本といえます。
介護福祉や社会福祉を学んでいる学生や高校生の皆さんに、ぜひ読んでいただきたいと思います。

(短期大学部 白井 幸久)

 

太田 寛『ドクターが教える!親子で考える「子宮頸がん」と「女性のカラダ」』、日東書院本社、2020年12月

 現在、コロナ禍の中「ワクチン」というキーワードが飛び交っていますが、子宮頸がんのワクチンもあるということは皆様ご存知でしょうか?今回、ご紹介する子宮頸がんについての本は、前回ご紹介した乳がんと同じ女性特有のがんであり、比較的若い女性がかかることが多く、近年増加傾向にあります。  

 最近、YouTubeで音楽を視聴していて、友人がファンであった一人の女性歌手を今でもよく思い出すことがあります。日本の女性歌手でZARDのヴォーカリストである坂井泉水さんが、2007年に40歳という若さでこの世を去りました。彼女の突然の訃報に、日本の多くのファンが驚き、悲しみました。彼女の歌声、詩にどれだけの人たちが勇気づけられたことでしょうか。彼女は、子宮頸がんを発症していました。当時私は、大学でちょうど細胞検査演習(婦人科の組織病理学・細胞診断学)を学んでいるところでした。彼女の悲劇は、日本全土で注目され、子宮頸がん検診啓発へのうねりをつくると同時に男性にも子宮頸がんについて考える機会を与えるものであったと思います。  

 子宮頸がんは女性の病気なので、男性は関係ない、ワクチンの必要がないと考えてしまう方々も多いと思いますが、男性がワクチンを接種することで、男性のHPV感染者が減り、女性がHPVに感染する確率をさらに減らすことができるという理由から海外では、男女両方にHPVワクチンの接種を推奨している国が多くなってきているようです。もし自分の大切な女性が子宮頸がんになった時、男性も知識があれば一緒に考えて、少しでも力になることができるはずです。ぜひこの本を読んで男性の方々もご家族、友人、パートナーのためにも理解を深めてほしいと思います。  

 子宮頸がんの大部分は、HPV (Human Papilloma Virus)というウイルスの感染によって起こります。直接的な原因が分かっていますが、世界と日本で子宮頸がん検診の受診率をみると諸外国に比べ日本はとても低いのです(出所:OECD. stat, Cervical cancer screening survey data)。またワクチン接種も遅れているのが日本の現状です。ただワクチンと副反応の関係もあるので、難しい問題でもあります。  

 このような状況下で、NPO法人 子宮頸がんを考える市民の会は、「子宮頸がんは検診とワクチンによって予防できる唯一のがんという現実を知って、自分のこととして行動してもらいたい」という声を若い女性を中心に届けるため、2006年に毎年4月9日を「子宮頸がんを予防する日」として制定しました。そして、2009年からは「LOVE49 プロジェクト」として街頭啓発活動をNPO法人 子宮頸がんを考える市民の会が全国の臨床検査技師(細胞検査士)と共に日々予防・啓発活動を行っています。  

 本書では、女性の体の構造と機能~子宮がんまで分かりやすくまとめられており、予防法(検診、ワクチン)についてもメリット、デメリット、丁寧に書かれており、まさに「親(父・母)子(息子・娘)」で読んでいただきたい一冊であります。  最後に、検査は、恐い、時間がない、恥ずかしい、様々な理由があると思いますが、近年では、病院での細胞採取に加えて、自宅での自己採取も選択できる時代です。そして、日本には、優秀な病理検査(細胞検査)を担当する臨床検査技師(細胞検査士)が多く存在しております。どんな病気でも早期発見が一番です。ぜひ安心して、体にやさしい細胞検査を受けてください。私自身も、家族、親戚、知人と検査の重要性を伝えてきた中で、間接的ではありますが、従姉を細胞検査を通し、子宮頸がんから救うことができました。この経験は、私が今まで病理に携わっていて良かったと心から思える瞬間でした。私は病理に携わる人間として母校で学んだ信条をいつも大切にしています。

「標本これ人なり、真心を以て接すべし           

         技術これ美なり、努力を以て磨くべし                       

                 診断これ命なり、責任を以て臨むべし」

以上のことを心に刻んでこれからも教育・研究を通して、命を救うメディカルスタッフ・研究者の育成に貢献していきたいと思います。

(医療技術学部・半田 正)

公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会