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授業情報 LESSON

授業情報
2021.07.02
読書の愉しみpart5~本学教員がみなさんにお薦めの本を紹介します~

金森俊朗『希望の教室:金森学級からのメッセージ』角川書店、2005年4月

 「(子どもに関わる仕事をする人は)キャッチャーであれ。子どもはピッチャーで、さまざまな球を投げてくるから。」「子どもたち心の声を豊かに受け止める大人がいれば、多くの子たちは、面白いほどに自分を語る。」

 2020年3月2日。石川県の小学校で38年間教鞭をとり、「いのちの授業」に取り組み続けた金森俊朗先生が亡くなった。子どもの心の声を的確に受け止め、命を輝かせる生き方を目指して、全力で学びに向かわせる。卓越した指導力や授業力と、実践に裏付けられた教育哲学を持った、信念の教師だった。残した著作も多く、本書はその代表と言ってよい。どのページからも金森学級での授業の様子や子どもたちの生き生きとした姿が伝わってくる。ありきたりの教育論ではない。すべてが金森学級での実践とつながり、子どもの声や学ぶ姿から紡ぎ出された、見事な教育の芸術と技術の記録といってよい。

 20年ほど前、私がまだ大学教員になりたての頃の話である。受け持つことになった「教育心理学」の講義で、いったいどのような学級を理想とし、どのような教師像を理想に描いて授業をすべきか、思いあぐねていた。大学や大学院で発達理論や教育心理学の知識は一通り学んだつもりであった。しかし、いざ実際の教室で教師は何を大切にして授業をしたらいいのか。困った問題を起こした児童生徒に、どのような指導をすべきなのか。明快に答える力を持っていなかった。

 そんなとき、NHKで放送された『こども:輝けいのち:涙と笑いのハッピークラス』(2004)で金森先生の存在を知り、大半の著書を買い、読み漁った。そこには、自分がもし教師として教壇に立っていたら、心からこうありたいと願うような、いわば「つなげる教育」と「つながり合う教室」の理想があった。

 今は多くの知識が増えたこともあり、授業で金森学級を直接紹介することは以前より少なくなった。しかし、私は今でも、ある知識と別の科目の知識が見事につながり合って理解を深め合う授業の作り方や、子どもたちが体験する日常世界と教科書を通して学ぶ知識とを見事につなげる授業の展開の中に、教育の理想を発見し続けている。

 子どもたちの力になることを目指す若い人たちに、ぜひ読んでもらいたい一冊である。

(リハビリテーション学部・橋本 広信)

 

 

長谷川和夫『認知症でも心は豊かに生きている』中央法規出版、2020年8月

 認知症研究者の第一人者が認知症になって、出版した本です。長谷川先生は、認知症の診断の物差しとなる改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を開発された方で、多く使われている評価スケールです。講演会なども聞かせていただき、丁寧な語り口調で、芸術や文化を引き合いに出しながら、認知症の方の尊厳や生き方を重要しなさっていた印象です。その方が、当事者となり認知症の方の特徴、思い、環境や周囲の関わり方など、重要な点を100の言葉として、伝えています。文頭より、「自分が認知症になり、私もようやく本物の認知症研究者になったのではないかと思っています。」と研究者であり当事者でないといえない言葉で語りかけてくれます。高齢当事者に「周りを頼ることの勇気」、「to endure 耐えること」の必要性を説き、支援者には「安心してもらうこと」、「本人主体で進めていくこと」、そして、「やさしさと愛情」が重要だと示してくれています。

 認知症の方の理解ととともに優しい気持ちになれる一冊です。是非一読ください。

(リハビリテーション学部 古田 常人)

 

 

涌井貞美『高校数学でわかるディープラーニングのしくみ』ベレ出版、2019年12月  

 ここ数年、AI(人工知能)が話題になっています。中でも、「ディープラーニング」(日本語では「深層学習」)という手法が、AIの進化に非常に大きな役割を果たしています。では、ディープラーニングとは、いったいどのような仕組みで動作しているのでしょうか?本書では、そのことを高校生レベルの数学力(ただし、微分まで理解している程度)でもわかるように解説しています。  

 ディープラーニングは、おおざっぱに言えば、神経細胞の仕組みを疑似的に数式化して、そのパラメータを数学的に最適化することで、画像認識や音声認識などを行えるようにする手法です。非常に難しそうなイメージがありますが、実際のところは、仕組み的にはそれほど高度なことが行われているわけではありません(とは言え、計算の量が多いので複雑ではありますが)。

 本書では、畳み込みニューラルネットワークやリカレントニューラルネットワーク、また勾配降下法や逆誤差伝播法など、ディープラーニングを構成する数学の仕組みについて、分かりやすい例を用いて解説しています。ディープラーニングの仕組みを解説した本はいろいろありますが、それらの中でも最も読みやすい部類の本ではないかと思います。また、Excelで実際に計算を試すこともできるように、サンプルのデータも用意されています。「ディープラーニングの仕組みを知りたい」という方は、ぜひ読んでみることをお勧めします。

(医療技術学部 藤本 壱)

公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会