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授業情報 LESSON

授業情報
2021.08.31
読書の愉しみpart10~本学教員がみなさんにお薦めの本を紹介します~

今井むつみ『英語独習法』岩波新書、2020年12月
 皆さんは誰しも「英語ができるようになりたい」と、漠然とした願望があるのではないでしょうか。日本人は、高校までの6年間に勉強をするのだけれども少しも英語が上達しない、とよく言われます。それは何故なのか、そしてどのようにしたら自学自習で英語が上達するかを述べたのが、この本です。
 作者は問いかけます。そもそも、「英語ができるようになりたい」とはどのレベルまでの英語力を言っているのか。「英語を母国語とする小学生レベルの英語」なのか、「ある程度内容のある話ができるレベル」なのか、それとも「英語のプロとしてビジネスや研究などで発言できるレベル」なのかを、はっきりさせる必要があると言います。そしてどのレベルであっても、習得には時間と努力が必要で、決して「楽に」英語がペラペラになると言うことはなく、特に片手間の勉強で、プロのレベルの英語を習得するのは無理だ、と断言します。ここまで言われると、「もう無理だ、英語はもういい」とあきらめてしまいそうですが、それでも英語に魅力を感じる人はぜひ読み進めて欲しい。
 著者は、子どもの母語の習得を長年研究してきた認知心理学の研究者なので、人間はどのようにして言語を学ぶのかという観点で、学習方法を提案します。「知識があること」と「使えること」は別で、知識を得たらそれを適切に使えるよう別途力を磨いて行く必要があると言います。英語を適切に使うためには、日本語とは異なる英単語等が持つ独自のスキーマ(ある事柄についての枠組みとなる知識)を身につける必要があり、そのための方法として、コーパスやWordNetなどのオンラインツールの利用の仕方が紹介されています。
 さらには、語彙力、リスニング力、スピーキング力、ライティング力の効果的な育成方法を、認知心理学的な観点から説明してありますので、特に英語の具体的な学習方法に興味のある人は後半の章から読んでも良いでしょう。

(社会福祉学部・戸塚 泰聖)

 

 

日野原重明『生きていくあなたへ 105歳どうしても遺したかった言葉』
幻冬舎、2017年9月
 著者の日野原重明医師は、聖路加国際病院長を長年にわたりつとめ、数々の著書や講演活動をされてきました。この本は「死は命の終わりではない」「愛すること」「ゆるすことは難しい」「大切なことはすぐにはわからない」「未知なる自分との出会い」と短編になっているので自分の興味関心のあるところから読み進めることができます。
 「延命治療についてどう思いますか」の問いに「延命治療を受けるかどうかについては、その方本人の死生観が大きくかかわってきます。命とは何なのか、生きるとは何なのか、という考えと無関係ではないでしょう。」「命とは時間の中にある。そして、その時間をどう使うか、使う目的がある以上、生きる価値がある。」と書かれています。限りある時間を大切にしていくことが生きていく上で重要であると改めて感じました。
 この本をきっかけに「命とは何なのか、生きるとは何なのか」考えてみるのも良いと思います。医療従事者を目指す人だけでなく、自分自身の生き方、死生観についても考えてみてはどうでしょうか。

(看護学部・塚越 八重子)

 

 

立花 隆『宇宙からの帰還』中公文庫、1985年7月
 人類史上初めて宇宙空間に出た人間であるユーリ・ガガーリンの最初の感想が「地球は青かった」であることは有名な話です。宇宙で撮影された写真や映像により、地球が青い天体であることは、いまや子どもでも知っています。ただ、宇宙飛行士にいわせると、地球の美しさは写真や映像では絶対に伝わらないと言います。
 この本は、宇宙飛行に関する科学・技術的な側面ではなく、「宇宙から地球を見る」という極めて特異的な体験をした12名の宇宙飛行士の内的体験を丁寧なインタビュー取材を基にまとめられたものです。宇宙飛行士のシュワイカートは、「宇宙体験をすると、前と同じ人間ではありえない」と述べるほど、すべての宇宙飛行士に大きな影響を与えたことが、インタビューの内容から伝わります。
 宇宙空間に人間が飛び出し始めた現代は、海にしかいなかった生物がはじめて陸に上がった時に匹敵する進化史の大きな転回点が目の前に来ていると言えます。すぐに宇宙飛行をすることは容易ではありませんが、この本を読むことで「見えてくるものが変わる」可能性のある良書であると思います。

(リハビリテーション学部 牛込 祐樹)

 

 

鷲田 小彌太「やりたいこと」がわからない人たちへ
―人生にとって「仕事」とは何か?-PHP文庫 2001年5月
 学生時代は、誰もが「自分が本当にやりたいことは何なのか?」、「もっと良い目標や進路があるんじゃないか?」、「今の勉強は自分に向いてないんじゃないか?」などと、悩むことは多いと思います。
 そして、周りに目を向けると多くの学生が自分より優れ恵まれた境遇にあるように見え、自己卑下からなおさら「やりたいことがわからない迷路」にはまってしまい悩み苦しむ人も少なくはないでしょう。
 私自身も、学生時代は「自分に自信が持てず、常に失敗を恐れ、いつも心が揺れて」いました。
 社会人になってからも、「日々、もっと素晴らしい人生や、出逢いがあるはず!」と漫然と、そしてなんとなくの微かな希望と夢の中で、六十年の時が過ぎてしまいした。
 そして、歳を重ねるごとにその夢は幾度となく打ち砕かれ、現実の厳しさに引き戻され「お前は、進むのか?戻るか?」の自問自答の末、「進む?」としか決められない自分の不甲斐なさを厭わしくも感じてきました。
かと言って、「やりたいこと」を自分のやりたい様に出来る人たちは幸せかと言うと、実はこの手の人は社会や組織の中では孤立しがちで順応性にも欠けることが多く、成功からは遠ざかって行く傾向が経験則から省みることができます。
 結局のところ「やりたいことがわからない」、この問題は試行錯誤の末「自分自信で解決」しなければならないことです。
 本書は、「やりたいことさがしのノウハウ本ではありません」、さまざまな事例をもとにそういう事態に陥っている若者が、取り敢えずそこから脱け出すためにどのように考え、行動を起こしていったら良いのかを解説しています。
 今を無駄に過ごさないために、自分を見つめ直すきっかけとして、目の前にあることに真剣に取り組み全力でやることから自分探しの第一歩へ導くための一冊になれば思います。

(医療技術学部 秋山 康則)

 

 

『新訳 アヴエロンの野生児-ヴィクトールの発達と教育-』
J・M・G・イタール著、中野善達・松田 清訳、福村出版、1978年11月
 この本は、福村出版から出された「野生児シリーズ」全7巻のうちの1冊です。
野生児とは、何らかの原因により、幼少期に人間社会から隔離された環境で育った子供たちのことをいいます。皆さんの中には、「オオカミに育てられた子 アマラとカマラ」の話を知っている方も多いかもしれません。
 アヴエロンの野生児とは、フランス革命から間もない1799年に南フランスのアヴェロンで発見された、幼少期に何らかの理由(迷い込み、捨てられた等)で森の中に入り込み他の人間と接触することなく生存した少年(発見時12歳ほど)のことです。この少年は、発見された当時、常に落ち着きがなく動きまわり、獰猛で、完全に人間らしさを失っていました。この少年と出会った軍医、ジャン・イタールは、「人は生まれたときは白紙の状態にあり、経験・環境が人間を構成する。この野生児は、人間的に生きる経験・環境をもたなかったためにこうした状況にあるのだ」と考え、人間に戻すための教育を深い愛情と努力と忍耐をもって始めました。この少年は、ヴィクトールと名付けられ、6年にわたる教育の結果、感覚機能の回復などの改善は見られたものの、話し言葉の獲得等、いわゆる「普通児」にすることはできませんでした。しかし、試行錯誤しながら進めた教育実践には、多くの教育の成果が具体的に示され、どんな子供にも教育の可能性があること、可能性を信じて取り組むことの必要性が明らかにされています。
 今から220年以上昔のフランスで、現在の特別支援教育の現場でも通用する教育的・発達的なアプローチにより丁寧な指導が行われていたことに、特別支援教育に携わった経験のある私は驚きを隠せません。
 将来、教職を目指す(特に特別支援教育に興味のある)皆さんには、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

(社会福祉学部 小林 義信)

公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会