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授業情報 LESSON

授業情報
2021.09.07
読書の愉しみpart11~本学教員がみなさんにお薦めの本を紹介します~

伊波園子『ひめゆりの沖縄戦―少女は嵐の中を生きた』
岩波ジュニア新書、1992年6月
 コロナ禍で、群馬県の高校の修学旅行が中止や延期、行き先の変更を余儀なくされたと聞いています。近年は沖縄修学旅行が増えておりましたが、断念した高校も多かったのではないでしょうか。沖縄修学旅行のテーマの1つが「平和学習」であり、多くの高校が激しい地上戦のあった南部戦跡を巡り、「ひめゆりの塔」と、隣接する「ひめゆり平和祈念資料館」を訪ねます。
 実はこの資料館が今年4月にリニューアルオープンされたそうです。テーマは「戦争からさらに遠くなった世代へ」です。「ひめゆり学徒隊」の生存者の方々も全員が90歳を超えました。語り部として戦争を語っても、今の若者たちになかなか伝わらない危機感から、伝わりやすいように展示を工夫されたそうです。とはいえ、コロナ禍で訪れる修学旅行生や観光客が激減し、経営の危機と併せて、ますます戦争の記憶や平和への思いの継承の危機におかれているとのことです。
 本書は小説ではなく体験記です。著者は、18歳でいわゆる「ひめゆり学徒隊」の一員として陸軍病院へ動員され、米軍に追われながら沖縄南部の壕を転々としながら傷病兵の看護にあたり、最後は最南端まで追い詰められて重傷を負いながら、辛うじて生き延びました。決して大げさではなく、体験者ならではの細かくリアルな記述であるとともに、18歳の少女の目線から沖縄戦への素直な思いが綴られています。また本のところどころに「沖縄戦とは何だったのか」「沖縄戦から学ぶもの」などのコラムが設けられ、沖縄戦の実相についても考えさせられます。
 終戦から76年が経過し、今の高校生・大学生の祖父母でさえ戦後世代が多くなり、戦争を記憶している方は少なくなりました。日本の行った戦争について「よくわからない」「ぴんとこない」のは当然です。しかし、「平和は決して当たり前のことではない」こと、「平和の尊さ」とその裏腹の「戦争の悲惨さ・愚かさ」を後世に伝えていくことは、日本のみならず人類の共通の課題であり、「どのようにしたら平和が実現できるか」は最重要テーマの1つであると思います。難しいテーマですが、まずは興味関心をもつ、入り口に立つことが出発点です。
 日本の戦争を知るには、たとえば沖縄に行き、現地で感じ取ることが望ましいのかもしれませんが、コロナ禍でなかなかそれが許されない中、ぜひ活字からも想像力を働かせてみてください。

(社会福祉学部 田村 浩一)

 

水野敬也『夢をかなえるゾウ1』文響社、2020年7月
 この本は、インドの神様「ガネーシャ」が、小さなお題をひとつ出して、それを主人公が実行していく。そして、また次のお題へ…という風に、とてもシンプルな自己啓発本です。
「ガネーシャ」は、なぜか関西弁を話し、ダメダメな主人公の夢をかなえるべく、教えを説いていきますが、その教えは「靴を磨く」とか、「募金するとか」心がけ次第で、誰もが実行可能なものばかり。関西弁で面白おかしく語りかけてくれます。この「ガネーシャ」は、体は人間(腕は4本ありますが…)、頭はゾウで、足元にはネズミがいます。インドでは大変有名な神様で、障害を取り去り、財産をもたらすと言われています。ゾウの頭を持つ理由には様々な神話があるのですが、こちらの神話もなかなか興味深いものがあります。この「ガネーシャ」の教えには、難しいものはありません。かなえたい夢があるあなた、何かを変えたいと思っているあなた、是非「ガネーシャ」の教えに耳を傾けてみてください。
 コロナ禍を経験した私たちに「ガネーシャ」は、当たり前のことに感謝するという大切なことに気づきを与えてくれます。

(看護学部・八木 智子)

 

川島みどり『あなたの看護は何色ですか』看護の科学社,2009年3月
 この本は、看護の大先輩である川島みどり氏が、看護師としての日々の生活の中で、目に
映る自然の変化に触れて、ほっとしたこと等を19篇にまとめた看護詞花集です。
 本のページを開いてみてください。心が癒される優しい色と美しい構図、作者の小さな独
り言が、物語りとなって四季折々の色を感じることができます。
 私は、「あなたの看護の色は何色ですか」に出会ったことで、思い悩んだときや、疲れているときに、この本を眺めています。そして、自分自身が年齢を重ねることで、看護の色が鮮やかになっていくことを実感しています。
 また、看護を目指して入学する初学者の学生は、『真っ白』であり、看護を学ぶことで一
人ひとりが自分の看護の色で輝いていけるように支援するのが、看護教員の役割だと考えています。同じ色に教育するのではなく、学生個々に成長していくことで、素敵な看護の色を見つけてほしいと願っています。
 看護学生の方、これから看護を目指そうと考えている方、看護師の方にお薦めします。

(看護学部 平出 恵子)

 

加藤公太『美術解剖学とは何か』(株)トランスビュー、2020年7月
 私は、1年間で150冊程度の本を読むことを10年近く続けています。2021年は8月までに102冊の本を読みました。12月までにあと50冊ほど読む予定です。また、新聞は毎朝2紙を読んでから出勤するようにしています。新聞は日々の出来事を把握できるだけでなく、新書の紹介も豊富なため、購入する本を選択することにも役立ちます。前置きが長くなりましたが、上述の102冊の中から、印象に残った1冊を紹介します。
 美術解剖学とは、「美術」と「医学」のあいだにある学問と定義されています。聞き慣れない言葉かもしれませんが、古くはレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)のスケッチが、それに該当すると言われています。本書では、このような歴史的な側面も丁寧に列挙されています。著者の加藤氏は、美術解剖学を学べば「見る目」が養われると言及しています。そして、この「見る目」とは「表面を見る目」、「内部を見る目」、「つながりを知る目」であると解説しています。つまり、芸術家は人間を表現(表面を見る目)するために、人体の内部構造(内部を見る目)から多くのことを学んできた(つながりを知る目)と解釈できます。なお、本書で言及されている芸術家の「見る目」は、医療従事者に求められる「見る目」とも共通点が多いです。対象となる方の悩みや苦しみは、「目に見える」ことだけではないからです。そして、「目に見えない」ことの方に重要な「つながり」が隠れていたりもします。
 補足ですが、芸術学を修了した人たちが得意とする「不確実で不安定かつ複雑な」テーマに対応する力は「アート思考」と言われ、近年注目を集めています。ご興味のある方は、プレジデント社から2019年に出版された『アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法』(著・秋元雄史)もおすすめです。

(リハビリテーション学部・村山 明彦)

 

長澤光晴『眠れなくなるほど面白い 図解 物理の話』日本文芸社,2016年6月
 私自身の高校時代を思い出すと物理生物の教科選択において,数学などの数式を扱う教科が好きでしたので,物理を選択しました.しかし一方で,数式の処理が苦手だからといった理由で,物理ではなく比較的暗記の多い生物を選択した友人が多くいました.物理は,この世の森羅万象を数式として記述できる大変面白い学問なので,個人的に非常にもったいないなと思っておりました.
 皆さんの中にも数学が苦手といった理由や暗記科目の方が得意という理由で物理を避けた方もいらっしゃるのではないでしょうか.生物も大変面白い学問ですが,ネガティブな理由で物理を避けてしまうのは勿体ない選択だと思います.
 私は工学部の機械工学出身なので,物理の特に力学系を扱うことが多かったですが,物理系の専攻に限らず医療系など理系分野の専攻に進学すると,使用する機器の原理などを理解するために,物理を直接扱う分野でなくても,結局のところ勉強せざるを得ないのです.
 実際に物理の授業を受けてみると,どうしても法則の説明や導出が中心になってしまい,数学が苦手という方にはハードルが高く感じると思います.物理を独学でやるのは無理といった方や授業受けてみたら数式ばかりで何言っているのかわからなかった方に,物理学の勉強を始めるきっかけとして本書をお勧めします.
 本書では,飛行機が飛ぶ理由や空が青い理由など,身の回りの物理現象に焦点を当て,難しくなりすぎない程度に図を交え解説をしております.多岐にわたる分野の説明がなされているので,ただ単に物理の勉強用に読むのではなく,教養を身に着けるためにも大変役立つと思います.この本を読むことで,将来お父さんお母さんになったとき,子供の“何で空は青いの?”といった純粋な疑問にも答えることができるようになるかも知れませんね.

(医療技術学部 大野 侑亮)

公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会