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授業情報 LESSON

授業情報
2021.09.17
読書の愉しみpart12~本学教員がみなさんにお薦めの本を紹介します~

佐藤美由紀『世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉』双葉社、2015年7月
 リオ+20を知っていますか? 
 SDGDsの交渉プロセスが合意された会議として話題になりました。
 この会議がもう一つ話題になったことがあります。
 ホセ・ムヒカ大統領の演説です。
 当時ホセ・ムヒカ氏はウルグアイの大統領でした。世界で最も貧しい大統領として話題になり、映画にもなったので、ご覧になった方もいるかもしれません。
 その、リオ+20の最後の演説を行ったのが、ホセ・ムヒカ大統領です。
 リオ+20では持続可能な発展と世界の貧困をなくすことについて話し合われ、今のSDGsにつながる内容の演説が各国から行われました。
 演説の中でホセ・ムヒカ大統領は「今の発展を続けることが本当に豊かなのか」と問いました。
 大量生産、大量消費が経済的発展のために良いこととされている消費主義社会について、この会議で疑問を呈したのです。
 そして、問題の本質は環境問題にあるのではなく、政治問題にあると主張しました。
 いくら持続可能な発展を話し合っても、根本の原因である大量生産、大量消費の社会構造を変えなければ、意味がない。そして、それを変えることができるのは政治の役割であると主張しました。
 そのためには、たくさんの物を持ち、経済的に発展することが至上とされる消費主義社会を変えなければいけないと言われました。経済発展を優先する各国の首脳にとっては耳の痛い言葉だったでしょう。
 日本でも無数のデザインのエコバッグが販売されています。たくさんのデザイン、色、小さく、持ち運びやすいといった付加価値が付けられ、大量に生産されています。必要以上のエコバッグが作られ、消費されていく姿がSDGsの求める姿なのか考える必要があります。
 この本からは、本質を見抜く力に気づき、私たちの幸せに与える政治の影響の大きさを考えさせられます。

(看護学部 剱持 貴史)

 

小林健一郎、櫻井薫、栂安秀樹、林甫『人は口から老化する!』現代書林、2020年4月
 加齢とともに身体が衰えるように、口の機能にも衰えが来ます。口の衛生状態が悪かったり、虫歯や歯周病の治療が途中だったり、合わない入れ歯を使っていたりすると機能の低下が進みます。それはそうだろう…と納得する方が多いと思います。加齢には逆らえない、ということかと思いますが、この口の機能の衰えは加齢とともにというだけではないようです。
 オーラル(Oral:口)フレイル(Frailty:虚弱)という言葉をご存じでしょうか。オーラルフレイルは「口の機能の低下」「口の老化」のことです。口とその周りにはたくさんの筋肉が集中しています。私たちが固いものを含め、さまざまな食べ物をかんだり、すりつぶしたり、飲み込んだりできるのはこうした筋肉の働きのおかげです。
 更に口の筋肉は日々の会話によって自然に鍛えられ、人と話す機会がなくなると弱まります。一人暮らしが増えている日本において多くの人々はオーラルフレイルになりやすい環境にあるといえます…ちょっと待ってください、今、私も含めてそんな人が増えているのではないでしょうか。
 昨今、コロナウイルス感染症に感染しないこと、感染を拡げないことを考えて生活することを抜きにしては日常が成り立ちません。人々は暮らしの中で、いくらマスクをしているとはいえ、会話をする機会は減っているのではないでしょうか。たとえ家族内であったとしても。つまり、加齢とともに、ではないオーラルフレイルの増加が容易に想像できる、ということに私は改めて気づかされました。
 本書では、オーラルフレイルの最前線についての歯科医師の地域での取り組みが紹介されています。自身の健康のために、また、それにかかわる未来の職業人として、ご一読をお薦めします。あっという間に読み進められる一冊です。

(看護学部・橋本 いずみ)

 

鈴木大介・鈴木匡子『壊れた脳と生きる-高次機能障害「名もなき苦しみ」の理解と支援』
筑摩書房、2021年6月
 皆さんは「高次脳機能障害」という言葉はご存知でしょうか。一般的には、脳血管障害や変性疾患、頭部外傷などにより、失語、失行、失認、記憶障害、注意障害をきたしている状態と定義されています。近年、「高次脳機能障害」の認知度は拡大しているものの、外見的に障害が目立ちにくい点や当事者本人も障害を認識できないことがある点などから「見えない障害」とも呼ばれ、まだまだ理解は乏しい障害と言えます。
 この「高次脳機能障害」について、当書では脳梗塞により高次脳機能障害が残る当事者・鈴木大介氏と、神経内科専門医である鈴木匡子氏との対談の様子が書かれています。これまで医療従事者として、「高次脳機能障害」について私なりに勉強をし、患者に向き合ってきましたが、なかなか掴めないままでいました。しかし、当書では当事者がどのような思いで生活をしているのか、どう感じているのか、または当事者の希望・要望が赤裸々に書かれているため、医療従事者として耳の痛い点もあり、これまでの自身の「高次脳機能障害」患者に対する考え方を見直すきっかけとなりました。
 当書は、医療従事者として「高次脳機能障害」患者に対しての接し方や治療方法としてもヒントを与えてくれる実用的なものとなっています。また、医療従事者だけでなく、「高次脳機能障害」に関わる全ての人にとって、理解や新しい気づきを与えてくれる一冊となっています。ぜひお手に取ってご覧ください。

(リハビリテーション学部 小林 雄斗)

 

加藤諦三『大学で何を学ぶか』KKベストセラーズ、2009年5月
 この文章を読んで下さっている方は高校生か在学生かと思います。高校生の皆さんは大学についてのイメージはどんなものをお持ちでしょうか?在学生の皆さんは大学に入る前と後で大学についての持っていたイメージは変わったでしょうか?
 「大学は高校時代の延長ではけっしてない」「大学とはまったく新しいところ、ゼロからの出発なのである」というまえがきで始まる本書は1975年に刊行したものに2009年に新章を加筆して出版されました。既に40年以上経過していますが、今読んでも古さを感じない良書であると思います。
 大学での講義、読書、進路、教員から学ぶことなどが中心に書かれていますが、心理学の大家である著者らしく今までの自分と違う自分を発見するにはどうしたらいいのか、大学に入ったものの希望を失いかけている人が自信と希望をもって大学を卒業していくにはどうしたらいいのか、などが書かれています。大学生活で学べることのみならず、人生論が含まれている本であると思います。
 私はこの本を社会人になってから読んだのですが、気付かされることが多かったです。特に「好きなことは見つけるというよりも育てるもの、創るもの」「きっかけはある。きっかけにしないで過ぎてしまえば、きっかけを逃したことには気づかないからだ。それをきっかけにしないのは、ほかでもない自分自身」という言葉は心に残りました。
 この本を読むことは大学のイメージや今後の進路、大学生活の過ごし方、その先の人生について考えて頂けるきっかけになると思います。

(リハビリテーション学部・小林 昭博)

 

曽野綾子『六十歳からの人生』興陽館、2018年10月
 曽野さんの本の多くは、彼女の人生観、世界観にあふれている。『六十歳からの人生』は人生の後半をどのように生きていくか(いるか)を綴ったエッセイ集である。その中で、「たいていの年寄りは目標がなかったから、生きていけないのではないでしょうか。老人ホームで手厚く世話をしてもらって、お花見だ、お月見だ、盆踊りだと行事を開いていただいても、目標がないと楽しくないかもしれません」と述べている。また、「誰に対しても、他人は目的を与えることはできない。その人の希望を叶えるために相当助けることはできます」という内容は、我々医療福祉に携わる者が学生たちに伝えている大切なマインドの一つである。ひと言で現せばQOL(=quality of life:人生の質)ということになるが、まさにリハビリテーションの最終目標もそこなのである。
 以前、「寝たきりのかたが人の役に立てる、ボランティアができるか」と考えたことがある。書中、「おむつを当てた寝たきり老人になっていても、なお人間の尊厳を失わない人がいる…(中略)。感謝というものは一見感謝する人が下の位置におり、感謝される人が上位にあってその恩恵を与えているように見えるが、本当は立場が逆なのである。なぜなら感謝するという行為は、感謝する相手に喜びを与えるから、力なく病んだ老人のほうがまだれっきとして与える側にいるのである」と述べられており、この言葉にこれだと得心が行った。最近流行りの「SDGs」についても、彼女に言わせてみれば「身の丈で生きていく」そのままであり、人新世の「資本論」(斎藤幸平著、集英社新書)で著者も述べているが、SDGsは資本主義の辛い現実(量を追い求めた結果)が引き起こす苦悩を和らげる「大衆のアヘン」であり、この言葉に乗って騒ぐのではなく、日々当たり前に「身の丈」で生きていく(質を大切にする)知恵と工夫が大切なのである。

(リハビリテーション学部 小島 俊文)

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