EN

授業情報 LESSON

授業情報
2021.10.25
読書の愉しみpart15~本学教員がみなさんにお薦めの本を紹介します~

河合隼雄(河合俊雄編)『神話の心理学-現代人の生き方のヒント-』
岩波書店、2016年12月
 生きるための深い知恵を学ぶ素材として、「神話」がある(河合,2016)。河合隼雄(1928~2007)は、京都大学心理学部卒業後、アメリカ留学を経て、スイスユング研究所で日本人として初めて、ユング派分析家の資格を取得した。その後、国際箱庭学会や日本臨床心理士会の設立等、国内外におけるユング分析心理学の理解と実践に貢献している。
 河合は自身の専門であった臨床心理学にとどまらず、日本文学をはじめ、児童文学、絵本、神話、昔話などの研究、また音楽や楽劇についての考察を深めるなど、人の心を豊かにすることを目指してさまざまな活動を行っていた。
 こうした数ある活動において、河合は物語の特殊性を次のように述べている。「物語の中でも特に神話は、人間や世界の成立にまで立ち返っての語りであり、神話から学ぶことがたくさんある」。私も同感で、昔から語り伝えられている物語、神話には、人間の知恵が宿っている。知識ではなく心の豊かさや生きるための心の深い知恵である。
 したがって物語や神話を読むには、読み手の人間力が必要であるし、もっと言えば読み手によってそれぞれ異なる解釈ができるところも面白い。なかでも「神話」は自分の読み方ができる一方、生き方の方向性も示してくれる。「神話の心理学」第一章は、「不安や孤独の原因」で始まる。現代人の生き方の難しさを如実に表していると言える。現代に生きる私たちに何某かを指し示すヒントを見つけることができるかもしれない。

(社会福祉学部 植原 美智子)

 

竹中直人『ニューロダイバーシティの教科書 -多様性尊重社会でのキーワード-』
金子書房、2020年12月
 neuro=「脳や神経」、diversity=「多様性」。この2つの言葉から生まれたneurodiversity(ニューロダイバーシティ)は、脳や神経由来の個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて尊重しあい、その違いを社会の中で活かしていこうという考え方です。
 その視点で考えると、自閉スペクトラム症などの発達障害と呼ばれる特性について私たちがすべきことは、良い悪いの評価でなく、その個人を理解して、その人に合った環境を提供する、もしくはその人自らがその環境を作り出せるように支援することだと思います。それは、まさにニューロダイバーシティの視点での保育・教育を含む対人援助そのものです。
 発達障害による現象は、ついつい「障害児・者問題」のフレームだけで捉えられがちですが、脳や神経に由来する「少数派との異文化共生」というフレームで捉える発想は、自らを問い直すきっかけとなったと同時に、「片付けられない私」を正当化しようとする自分に苦笑いしています。

(社会福祉学部 川端 奈津子)

 

斎藤環解説・水谷緑まんが『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』
医学書院、2021年3月
 「会話って難しい」と感じたことがない人はいないのではないのでしょうか。そう感じたとしても、やはり「会話は大切」という思いを持ち続けられる人達にぜひ読んでほしい本です。
 「オープンダイアローグ」とは聞きなれない言葉ですが、直訳すれば「開かれた対話」です。フィンランドにあるケロプダス病院のスタッフたちを中心に、1980 年代から開発と実践が続けられ、現在この精神病患者を対象とした治療手法が国際的な注目を集めています。治療手法というと難しく感じられますが、シンプルに言えばオープンダイアローグとは対話に関する1つの考え方と技術であると言えます。
 開発者のセイックラ教授はオープンダイアローグが「技法」や「治療プログラム」ではなく、「哲学」や「考え方」であることを繰り返し強調しています。オープンダイアローグという専門技術を、誰もが取り組める一定の手順でわかりやすくまとめられています。また、まんがが本の半分以上に入っていて、読みやすいのもお勧めする点です。
 人生の困難な状況の中で、対話から生まれる変化が6編の物語として描かれています。物語の内容は精神科臨床の場面ですが、出てくる孤独感や人生の迷いは多くの人が感じているものです。「対話さえ続けば、あとはなんとかなりますから!」と本の帯にある通り、対話が回復や成長につながるという希望が感じられる、技術以上のものが得られる一冊です。

(看護学部 片岡 信子)

 

池田晶子『14歳からの哲学 考えるための教科書』トランスビュー、2003年3月
 池田晶子氏は哲学をわかりやすく伝えてくれています。14歳からの哲学というタイトルではありますが、14歳という年齢に限らず、すべての年代の人達を対象としている考えるための教科書です。この本にはこたえはなく、自分自身で考えることを考え続けること、それが生きるということの意味であることを教えてくれています。
 現在、情報があふれる世界に私たちは存在しています。しかし、この情報を知っていることにどれだけの意味があるのでしょうか。そこに自分の求める正しいこたえはあるのでしょうか。情報を知っているだけではたどりつかない真実があるということを知ること、真実をみつけるためには自分自身で考えるしか方法はないと気づくこと、その気づきを発見するための教科書であると思います。
 コロナ禍において、当たり前であったことが当たり前でなくなった現在、この本を読み、そして変わっていく世界をどう生きるべきなのかを考えてほしいと思います。
 池田晶子氏は2007年に46歳の若さでお亡くなりなっています。遺してくれたことばは人に読み継がれていくことで生きていくことでしょう。

(看護学部 佐竹 明美)

 

加藤容崇『医者が教えるサウナの教科書』ダイヤモンド社、2020年10月
 サウナに魅せられて、リピートする人が急増しています。1964年の東京オリンピック直後に起こった第1次ブーム、スーパー銭湯の開設が相次いだ90年代の第2次に続き、今回は第3次ブームと言われていました。都市部の施設に愛好家が押し寄せて、場所によっては予約待ちでなかなか入れなくなるなど、サウナ熱は最高潮に達しつつありました。しかし、コロナ禍による影響はないとは言い難いこのご時世です。そんな中でも、サウナに魅せられてしまう人は多く、個室サウナ施設までワイドショーで紹介されていました。
 今回、サウナにまつわる多くの図書から推薦したいのは、群馬県富岡市出身の慶応義塾大学医学部腫瘍センター特任助教・日本サウナ学会代表理事(通称サウナ教授)が書いた本です。この本では、サウナがビジネスのパフォーマンスを上げる医学的根拠が、次々と明らかになっていると書かれています。サウナでいう「ととのう」時の脳内で起きている構造や正しいサウナの入り方まで紹介されています。私が興味深いと思ったのは、女性のほうがサウナの感受性が高く「ととのい」やすいことです。特に女性にとっては、肌が綺麗になり、痩せやすい体質になるという効果も魅力的でした。
 今までサウナはおじさんの娯楽というイメージが少なからずありましたが、この医学的根拠を基にした本書を読み、サウナの魅力を知ることが出来ました。アフターコロナの楽しみの1つになるお勧めしたい一冊です。

(看護学部 小松 由利絵)

公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会