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授業情報
2022.05.17
令和4年度「読書の愉しみ」の開始にあたって

令和4年度「読書の愉しみ」の開始にあたって

 2020年度から始まりました「読書の愉しみ」も、今年度で3年目を迎えました。初年度分は『明窓浄机』として冊子化することもできました。これもひとえにこの「読書の愉しみ」を読んでくださる受験生や在学生の賜です。改めて御礼申し上げます。

 今年度も本学教師陣がみなさんを読書の愉しみに誘います。

 

 

倉石 武四郎『中国語五十年』岩波新書、1973年1月

 今でこそ、中国語のテキストはどれを選べばいいのか迷うほど、毎年大量に出版されています。日本と中国の関係は有史以来、脈々と続いているわけですから、ある意味では当たり前と思うかも知れません。

 しかし、中国に関する学術(思想・文学・歴史など)を専門としていても、中国語(現代中国語)を必要としなかった時期が日本には存在したのです。なぜでしょうか。それは、日本には「漢文訓読」という方法で漢文(古典中国語)を読解する方法を我々の先祖が編み出したからです。この「漢文訓読」を用いれば、大方の漢文を読むことが可能なため、外国語としての現代中国語を覚え、それから古典中国語を学ぶという手順を踏まなくとも、一気に漢文が読めたからです。

 この考え方に異議を唱えたのがこの本の筆者である倉石武四郎(1897年9月21日~1975年11月14日)です。倉石は漢文も「漢文訓読」で読むのではなく、中国語として読むべきだと主張しました。そうすると現代中国語の学習というのが、当然ながら必要になってきます。そのため、倉石は現代中国語の学習にも力を入れていくのです。

 中国を一「外国」として捉え、日本とは言語・文化が全く違うもの。だから、外国語としての中国語を学習し、中国を捉える必要がある。こういった考え方を徹底したところに倉石の凄みがあります。そして倉石の地道な努力が、現在の中国語学習の隆盛に繋がっているのです。

 しかし、我々日本の中国研究(専門的に言うと「中国学」と言います)が、世界から注目されてきた理由も、漢文訓読によって漢文を研究してきた江戸時代以来の厚みがあるからなのです。また、漢文訓読による文章のスタイルや漢文に基づく語彙が、日本語を形成しているのも明白な事実です。一「外国」として中国をヨーロッパと同じように扱うことは不可能なのです。

 倉石の『中国語五十年』は、倉石だけの中国語五十年ではなく、日本の戦前から戦後にかけての中国語教育・中国語学習の変遷でもあったのです。中国語に興味がある人には是非とも読んでもらいたい一冊です。

(社会福祉学部 岡野 康幸)

 

ウクライナ民話 エウゲーニー・M・ラチョフ絵/うちだ りさこ訳:「てぶくろ」

福音館書店、1965年11月

 皆さんは、ウクライナ南東部の都市、マリウポリに描かれた壁画の存在を知っているでしょうか。この壁画は、日本人アーティスト、ミヤザキケンスケ氏が、マリウポリ市民と共に制作したものです。壁画の中央には、大きな「てぶくろ」。そして、その中には様々な民族衣装をまとった国内外の人々が身を寄せあう姿、平和の象徴として描かれました。

 この絵のモチーフとなったのが、ウクライナ民話「てぶくろ」です。誰もが子どもの頃、一度は手に取って読んだことがある、または読み聞かせなどで聞いたことがある絵本ではないでしょうか。物語は、おじいさんが森に片方の「てぶくろ」を落としてしまったことから始まります。その「てぶくろ」にネズミやカエル、ウサギにオオカミ、最後はクマまで・・・様々な動物たちが集まってきて、片方の「てぶくろ」を住処に共存します。自然界の食物連鎖を考えたら共存するはずのない動物たちが、そこではたった一つの「てぶくろ」の中、お互いに譲り合い、みんな仲良く生活をします。

 連日の報道で、ウクライナの悲惨な状況を目の当たりにし、心を痛めている人も多いでしょう。冒頭で紹介した、マリウポリの壁画もロシア軍の砲撃により、その一部が損壊しました。

 大人になった今、改めてこの絵本を読み返し、物語の世界のように、争いごとのない平和な世の中を願わずにはいられません。皆さんも、子どもの頃に触れた絵本を読み返してみると、大人になった今だからこそ、物語に込められた作者の深い思いに気づくことがあるかもしれません。まずは、読書に親しむきっかけに絵本の世界観に触れてみてはいかがでしょうか?

 新たな発見があるかもしれません。

 (看護学部 川田 智美)

 

柿内尚文『バナナの魅力を100文字で伝えてください 誰にでも身につく36の伝わる法則』

 かんき出版、2021年12月

伝えることに悩んでいた。うまく伝えることができずに悩んでいた。でも、それは自分主体であるからということに気付かせてもらえた。この本に出逢って。

 「バナナは、暖かい地域でできて、黄色くて、何本かが房になっていて、皮をむいて食べると甘い果物」こんな説明を聞いたところで、「そんなことは知っている、だから?」って言われるに違いない。見たままの当たり前を当たり前に説明しても、それは「魅力」にならないし、誰も普段以上に食べたいとも思わない。魅力を伝えるということは、そこに相手がいる。その相手にいかに「伝わる」か、相手がその説明を聞いてどう感じるか、どう受け止めるか、受け止めてどんな行動を起こすかといった、相手主体で考えることが重要である。

 この本を読んで、自分も次のことを実践しようと思う。

・まずは、伝えてみる。自分の性格は一旦脇に置く。言葉にしないと伝わらない。

・伝わる7階建て構造を意識する。①ゴール設定、②納得感、③相手ベース、④見える化、⑤聞く力、⑥親近感、⑦信頼感。上手いセラピストは、患者様の話をよく聴いて、患者様の心に潜む要望に沿って治療を進めている。学びの場においても同じ。学生の話をよく聴いて、学生の望む方向に共に向かう。

・たくさんの伝わる技術の中から、特に次の4つを活用する。①「相手メリットの法則」、②「言いかえの法則」、③「3つのグッドの法則」、④「ファクトとメンタルの法則」。患者ファースト。学生ファースト。

 自分が伝えたいことがうまく伝われば、仕事や学業、家庭など、あらゆる場面における円滑なコミュニケーションにつながるはずだ。

(リハビリテーション学部 榊原 清)

 

山根 誠司『BLUE BACKS 算法勝負!「江戸の数学」に挑戦 どこまで解ける?「算額」28題』講談社、2015年1月

 皆さんは和算という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。和算とは、江戸時代に大きく発展を遂げた日本独自の数学です。17世紀から18世紀にかけては、デカルトが直交座標系の発見をしたり、ニュートンやライプニッツが微分積分学を確立したりと西洋においても数学が大きく発展した時代でした。しかし、この時代の日本は鎖国をしており、これらの流れを汲むことがなく、独自の数学文化を発展させてきました。

 独自の発展を遂げた和算ですが、我々が現在当然のように扱っている関数や座標の概念を持たないといった欠点もありました。それでも和算は、西洋の数学に匹敵、一部先を進むまで発展を遂げたのには、 数学の問いを神社仏閣に「算額」を掲げ、公開の場で算法勝負を行い、競い合える文化があったことが大きいと筆者は主張しています。

 「算額」とは神社仏閣に奉納された数学の絵馬です。数学と神仏を結び付け、数学の腕が上がったことへの感謝や研究発表の場として利用されていました。現在でも文化財として指定されている神社仏閣では、「算額」が現存しています。我々の身近なところでは、群馬県高崎市下小鳥町にある幸宮神社に奉納されています。この幸宮神社の「算額」には、鈎股弦(こうこげん)の術と呼ばれる定理を扱った問題が含まれています。鈎股弦とは、直角三角形のことを指し、私たちがよく知るところの三平方の定理のことです。

 この本は、現代の手法による解き方と和算による解き方の2通りの解法を載せています。まず自分で考えてみて、和算での解き方を見て新たな知見を得るといった読み方をすると、数学の問題を考える力が飛躍的に伸びると思います。数学が苦手な方でもほとんどの問題は中学数学までの知識でも解くことが出来るので、万人にお勧めできる本となっています。自分で解いた問題の「算額」を見に行くなどしても新しい趣味につながって楽しいと思いますので、是非読んでみてください。

(医療技術学部 大野 侑亮)

 

蜂谷英津子『介護職が知っておきたい接遇マナーのきほん』

日本実業出版社2018年5月

 人口の高齢化に伴い、介護が必要となる高齢者は、年々増加しています。介護に対するニーズも多様化・複雑化しており、介護の知識や技術のみならず、多くの利用者さんに満足してもらえるサービスの提供、さらには諸対応が求められます。そして社会人として適したマナーやコミュニケーション能力を身に付けることも必要となります。

 本書は、介護福祉職向けの書籍ではありますが、社会人として身につけておくべき内容としても捉えることができます。対人援助職を目指す学生の皆さんをはじめ、多くの人たちにも幅広く活用できるものであると考えます。

 マナーや接遇の基本や電話対応の方法、またトラブル(苦情・クレーム)への対処方法や第一印象を決める表情や態度、コミュニケーションのテクニックなども学ぶことができます。そして身だしなみや挨拶の仕方を含めたチェックリストも記載されており、自分自身を確認することもできます。利用者さんやご家族の方々の気持ちに寄り添い、思いやりを持って接することで相手から信頼され、よりよい関係を構築することが可能となります。

 接遇マナーの重要性を認識し、有能な介護福祉職が多く、社会に巣立つことを介護福祉養成校教員として期待しています。

(短期大学部 矢嶋 栄司)