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授業情報
2022.06.13
読書の愉しみpart5~本学教員がみなさんにお薦めの本を紹介します~

中室牧子・津川友介『原因と結果の経済学-データから真実を見抜く思考法-』

ダイヤモンド社、2017年2月

 本書は因果推論の基礎について学ぶことのできる書物であり、因果関係と相関関係を区別することの重要性を指摘している。因果関係とは、どちらかが原因で、どちらかが結果の関係にある。相関関係とは、一方が増えると、他方が増えたり減ったりするような関係にあるが、必ずしも原因と結果の関係にあるわけではない。一例として「メタボ検診を受けていれば長生きできるのか」という通説を挙げ、多くの人が正しいと誤解しているが、有力な研究結果ではメタボ検診と長生きの間には因果関係がないことが示されている。

 さらに相関関係があっても因果関係がないケースを紹介し、そして得られたデ-タから因果関係を検証する統計的手法についていろいろと紹介がされている。つまりデータ分析の基礎知識をわかりやすく学ぶことができる。

 医療現場では1990年代から、根拠(エビデンス)に基づく医療が重視されるようになり、専門家の意見や個人的な体験のみから判断することの危険性が注目されるようになっている。人命を守る医療従事者は、教養としてデータ分析の基礎を身につけることが、これからますます必要とされていると考えている。

(社会福祉学部 白石 憲一)

 

坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社』あさ出版、2008年3月

 医療や福祉も例外なく経営により成り立っています。「真に世のため人のためになる経営に懸命に取り組んでいる価値ある企業」を世の中に知らしめるための本を紹介します。

 医療や福祉が人々のためにあるように、企業も世の中のために存在しています。同じ価値を目指し経営しているのです。著者は、中小企業の支援に日本中、更に台湾、中国までも飛び回り、会社は誰のためにあるのかという問いに答えています。会社が生まれた瞬間から、広く社会のものと考え、公私混同経営は結局壊れていくことを教えてくれます。

 よい会社の経営者は、5人に対する責任を果たし幸せを提供するのです。5人とは、1番が、社員とその家族、2番は下請けの社員、3番目は顧客、4番目は地域社会、5番目株主です。ここでよい会社として紹介されている5社は、働く人の幸せを一番に考え実践しています。「日本理化学工業株式会社」は、障害者が7割を占め、誰もが互いに助け合い補い合い働く人たちがみな幸せを感じながら働く職場です。2つ目は、社員の誰もが会社で働く幸せを感じる「伊那食品株式会社」、社員の幸せを何より大切しています。3つ目は、辺境の地にあっても日本中から社員が集まる「中村ブレイス」、4つ目は、地域から愛され、人と人を結ぶ「株式会社柳月」、5つ目は、あなたのお客でほんとうによかったと言われる「杉山フルーツ」です。経営者が何よりも社員が幸せになれるように努力し、自身は身を粉にして社員のために働き、社員のお手本の生き方を示しています。

 私たちは労働者です。経営者の姿勢がどれ程働く私たちの生活を左右するのか。これから働くみなさんが、よい職場を得られたらとても幸せなことです。この本のシリーズは続き、多くのよい会社を紹介しています。よい会社は社会を明るくしてくれ、読者も温かい気持ちになれるでしょう。

(看護学部 勅使川原 洋子)

 

安藤雄一 ほか『がんがみえる』メディックメディア、2022年2月

 悪性新生物=がんは本邦の死亡原因の第一位となっている。生涯で二人に一人が罹患し、三~四人に一人ががんが原因で亡くなると言われており、我々にとって大変身近な病気である。

 がんとは、遺伝子変異などを原因として正常の細胞が悪性化=腫瘍化した状態をいい、身体に多くの悪影響を及ぼす。腫瘍化した細胞は正常な機能を失い無秩序な増殖を繰り返すことにより、治療後も転移や再発を引き起こし、最終的には死に至らしめることになる。今から数十年前までは生存率が非常に低く、多くのがんが“不治の病”であったが、近年は様々な治療法の登場で制御が可能な“慢性疾患”と考えられるようになってきた。

 本書ではがん全般の基本的知識からがんの治療、がんと社会生活や予防、一般的によく知られている主要ながんの概要について、非常に見やすいイラストで解説されている。医学を学ぶ学生だけでなく、医療に興味を持っている高校生や中学生、さらには一般の方にも理解しやすい内容となっており、がんについて勉強してみたいという方におすすめの一冊です。

(医療技術学部 増田 裕太)