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2022.09.15
読書の愉しみpart15~本学教員がみなさんにお薦めの本を紹介します~

ピアーズ・スティール著、池村千秋訳『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』

CCCメディアハウス、2012年6月

 夏休みの宿題は8月31日に終わらせるタイプでした。この原稿も締切前日に書いているくらいなので、私は重度の先延ばし人間だといえます。先延ばし癖は非常に厄介な性質で、あまりに酷いと社会生活において致命的な障害となります。レポートが未提出では単位がもらえませんし、卒業論文は締切時間を一分でも過ぎれば受け取ってもらえず卒業ができません。

 しかし幸いにして世の中には先延ばし癖の専門家という研究者が存在し、先延ばし癖は脳の仕組みに原因があり、科学的に対策できることが分かったのです。具体的な対策方法は本書を読んでいただくとして、この本を紹介するにあたって私がお伝えしたいのは「学びによって自分が変化していくことの楽しさ」です。

 私は人が変わるためには次の二段階が必要だと考えています。まず何らかの体験によって心が動かされること、そして変わるために行動を起こすことです。本を読み興味を惹かれただけでは「面白かったな」で終わりです。しかしどうすれば得た知識を自分の人生に活かせるかを考え、実際に行動すれば変化が起こります。学びの醍醐味はここにあるといえるでしょう。これをやってみようと考えながら読み、実行することができる人は、ただ漠然と内容を読み流す人よりもはるかに豊かな人生を展開していくことができるはずです。

 私も本書で知った対策方法を実践し、先延ばし癖が少しずつ改善されていることを実感しています。この原稿も明日には無事提出することができるでしょう。皆さんにも「知識を得て自分の人生に応用し、行動を変え、自分を変えていく」ことのすばらしさを是非体感していただきたいと願っています。まずはこの文章を読み終わったら「やろうと思っていたけど先延ばしにしていたこと」を、5分間だけ始めてみてはいかがでしょうか?

(医療技術学部 三枝 慶子)

 

柴田ケイコ著『ぱなしくん』PHP研究所、2022年2月

 ぱなし君は、お片づけが苦手な男の子。何でもそのままにしちゃうから、ぱなし君と呼ばれている。ぱなし君の毎日は、朝、なかなか起きずに寝っぱなし。朝ごはん、食べた器は置きっぱなし。毎日同じ服を着っぱなし。ぱなし君のお母さんには、「こんなに散らかしていると、おばけがやってくるわよ」と、言われてしまいます。

 散らかしっぱなしは、子どもだけではなく、大人もやってしまいがち。忙しいから後で片付けようと放置し、大切な物がなくなり、探すのに多くの時間を取られてしまうのは、私だけでしょうか。

 柴田ケイコさんいわく、出しっぱなしは、「いないいないババぁ妖怪」がやってくる。夜中に寝ている隙にあらわれて、こっそり盗んでは持っていく。

 詰め込みっぱなしは、「ビンボーボー」がやってくる。中身がぐちゃごちゃしている家が好きである。沢山詰め込まれ、奥の方や下の方にある忘れられているモノの存在を消して、また同じものを購入させてしまう。どんどん購入し家の中はいっぱいになり、お財布の中身は減り貧乏になっていく。

 植物をそのままにしっぱなしは、「カラカラ妖怪」がやってくる。水をやらず、替えずにいると、植物の声に敏感に反応し、徐々に生気を吸い取り弱らせてしまう。

 これまで、このような現象に心当たりがあり、自分事として拝見しました。何でも放置しっぱなしだと、期間によってはとんでもない事になっていることがあります。日頃から整理整頓し清潔を保ち、心地よい風通しのよい空間をつくり、また植物のエネルギーを取り込んで、負のエネルギーを溜め込まない、暮らしが快適な環境を整えるようにしていけたら思います。

 この本は、しろくまシリーズで人気の柴田ケイコさんが描き、色使いがとてもカラフルで、ユーモアいっぱいの片付け絵本です。ぜひお手に取っていただきたいと思います。

(看護学部 小野 智佐子)

 

児美川孝一郎『キャリア教育のウソ』ちくまプリマ―新書、2013年6月

 「キャリア教育」という言葉を聞いて、どんなことをイメージするでしょうか。「職場体験」や「インターンシップ」とすぐに用語が出てくる人もいるでしょうし、いまひとつピンとこない人も結構いるのではないでしょうか。

 「キャリア教育」というのは生涯学習(実は私の本当の専門分野です)の一分野であり、ここ20年ばかりの間で盛んに用いられ、文部科学省が政策を実施し、実際に教育現場でも展開されてきています。

 「キャリア教育」とは多様かつ予測不可能な世界に向けた準備のための教育、と言うことができますが、果たしてそういった機能を果たしうるものになっているのか、という疑問が本書の出発点になっています。現在学校現場で展開されている「キャリア教育」は、そもそもいったいどんなものであり、問題点があるとするならどんなものであるのか、そしてどのように「キャリア教育」と向き合えばよいのか、ということについて考えさせられるものとなっています。本書を通じて、自分自身が働くことの意味、そして大学卒業後でも学び続けることの意味について改めて考えてみてはいかがでしょうか。

(社会福祉学部 関本 仁)

 

川喜田 二郎『発想法 改版 - 創造性開発のために』‎中央公論新社、改版 2017年6月

 皆さんはKJ法をご存じですか。KJ法という名前をご存じでなくても、1枚のカードや付箋紙に1つの情報を書き込み、それぞれの位置を移動させたりグループにまとめたりしながら、情報を整理した経験のある方は多いでしょう。そのような手法をKJ法という体系的な技術として洗練し、本書「発想法―創造性開発のために」を通じて広く社会へ普及させたのが川喜田二郎氏です。KJ法の名称は川喜田氏のイニシャルに由来しています。

 たとえばグループで話し合って、ある問題を解決するためのアイデアを自由に出し合ったとします。グループのメンバーは多種多様なアイデアを提案することでしょう。問題の解決策を導き出すためには、それら貴重なアイデアをどのように取り扱えばよいでしょうか。

 KJ法では、まず1つのアイデアを1枚のラベルに書き込みます。続いてラベル同士の関係に着目しながらラベルとラベルを連結し、いくつかのグループを編成します。さらにはグループとグループの関係に着目しながらアイデア全体の構造を図解化、文章化します。この手法のメリットは、多種多様なアイデアを様々な角度からバランスよく吟味できる点です。一部のアイデアを偏重したり、逆に見落とすような失敗を避けることもできます。その結果として、私たちはアイデア全体の構造を明確に理解することが可能となります。またアイデアとアイデアを結びつけることによって、新たな視点や解釈の仕方が思い浮かんできます。このようなプロセスを経て、当初はどのメンバーも思いつかなかったような、創意にあふれた数々のアイデアが生み出されます。KJ法は単なるアイデアの整理法、分類法ではなく、多種多様なアイデアの中から新たなアイデアを創造するための「発想法」なのです。

 KJ法の実践的な入門書であり、また川喜田氏が開発したオリジナルのKJ法について詳しく解説された本書を、ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

(リハビリテーション学部 亀ヶ谷 忠彦)